
大地から生まれた音楽は、風となって世界をめぐる
フォークソングやフォークダンスなど日常語として定着している言葉は、比較的新しい英語です。〈ふつうのひとびと〉を意味するドイツ語の volk や英語の folk を含んだ言葉は、いずれも19世紀に使われるようになり、その流れから民俗学 folklore も始まりました。〈ふつうのひとびと〉を研究する学問は衣食住から儀礼や信仰など生活文化全般に及び、美術にも大きな影響を与えることになります。ラテンアメリカ、特にアンデス地方の音楽がフォルクローレと呼ばれるのも、スペイン語化した folklore を伝承音楽の意味で使ったからです。
アートもデザインも高度に専門化が進んでしまい、現在では見えづらくなっていますが、領域の違いにかかわらず根底には〈ふつうのひとびと〉の生活があります。今日ひとびとの声や身体から生まれるものの価値が見直されているのは、文明の極端な機械化に対する、ひと本来の反応なのかもしれません。さらに言えば〈ふつうのひとびと〉は人間だけの話ではなく、もともと大地と生命との交感に支えられた〈ふつうのしぜん〉であったという認識さえ生まれてきています。
風に国境がないように、大いなる山から生まれた音楽もまた、いかなるボーダーをも越えて届きます。鮮やかな色彩を響かせる歌やダンスとともに、来たるべきひとびとの風景を考えてみたいと思います。
多摩美術大学アートとデザインの人類学研究所 +芸術学科「21世紀文化論」 共催
第4回「記憶の道」シンポジウム
ひとびとの声・わたしたちの歌
◉開催概要
日 時 2025年12月6日(土) 13:30〜16:00(開場 13:00)
会 場 多摩美術大学 八王子キャンパス レクチャーBホール
参加費 無料
登壇者
イルマ・オスノ(アヤクーチョのケチュア音楽の歌手)
港千尋(写真家、アートとデザインの人類学研究所 所長)
椹木野衣(美術批評家、アートとデザインの人類学研究所 所員)
佐藤直樹(デザイナー・画家、アートとデザインの人類学研究所 所員)
金沢百枝(美術史家、アートとデザインの人類学研究所 所員)
陳芃宇(画家、アートとデザインの人類学研究所 所員)
参加方法
・本学学生・教職員は事前申込不要。直接会場へお越しください。
・一般の方は事前申込制(定員は先着30名程度、申込が定員に達し次第締切)
一般の方の参加申込 ▶︎ https://forms.gle/WsCmuGcTXgiW1HVo6
※参加申込は先着順での受付。申込が定員に達し次第、募集を締切。
※会場に到着した方から順番に着席、座席自由。
※着席時の定員は200名。満席の場合は立ち見となります。
※申込のキャンセル・欠席をされる場合は早めにお知らせください。
◉登壇者プロフィール

イルマ・オスノ|Irma Osno
アヤクーチョのケチュア音楽の歌手。1974年ペルー南部アヤクーチョ州ウアルカス村生まれ。12歳までケチュア語のみを話し、地元の伝統文化のなかで育つ。政府とゲリラ組織の武装対立による戦禍を避けて首都リマへ移住後、大学で教員資格を取得し、中学・高校でスペイン語教員として勤務。同時にサン・マルコス大学で民族舞踊を学び、アヤクーチョ民族舞踊団のメンバーとして活躍。日本に拠点を移して以降、ケチュア語による伝承歌を再構成した演奏や講演などを行い、歌・踊り・言語を通してアンデス文化の世界を紹介。詩と祈りを往還する独自の歌声によって、土地の記憶と人の営みをいまに響かせている。写真家ホンマタカシのドキュメンタリー映画『アヤクーチョの唄と秩父の山』(2019年)に出演。これまでのアルバムに、『アヤクーチョの雨』(共作/2013年)、『Taki Ayacucho』(2017年)、『Brisa con Tres Armas』(共作/2021年)がある。最新作はソロアルバム『Ayla Ayacucho』(2025年)。
港千尋|Chihiro MINATO
写真家。多摩美術大学教授、アートとデザインの人類学研究所所長。芸術の発生、記憶の予兆などをテーマに制作と研究を続けている。著書に『記憶――創造と想起の力』『インフラグラム――映像文明の新世紀』『風景論――変貌する地球と日本の記憶』など多数。「第2回浪漫台三線藝術季」(台湾)国際キューレーター。
椹木野衣|Noi SAWARAGI
美術批評家。多摩美術大学教授、アートとデザインの人類学研究所所員。1991年に最初の評論集『シミュレーショニズム』を刊行、他に『日本・現代・美術』『後美術論』『震美術論』など多数。福島県の帰還困難区域で開催中の「見に行くことができない展覧会」“Don’t Follow the Wind”では実行委員を務める。
佐藤直樹|Naoki SATO
デザイナー、画家。多摩美術大学教授、アートとデザインの人類学研究所所員。1994年に『WIRED』日本版創刊にあたりアートディレクターに就任。1998年アジール・デザイン(現アジール)設立。2012年から絵画制作へと重心を移す。「東京ビエンナーレ」(2020/2021, 2023)クリエイティブディレクター。
金沢百枝|Momo KANAZAWA
美術史家。多摩美術大学教授、アートとデザインの人類学研究所所員。主な著書に『ロマネスクの宇宙 ジローナの《天地創造の刺繍布》を読む』『ロマネスク美術革命』『イタリア古寺巡礼 』シリーズなど。『工芸青花』でロマネスク美術や西洋工芸について連載中。
陳芃宇 | Pengyu CHEN
画家。多摩美術大学講師、アートとデザインの人類学研究所所員。2018 年より多摩美術大学大学院研究室助教を経て、2023 年同大学絵画学科日本画専攻専任講師。2024 年第 51 回創画展創画会賞受賞。現在創画会準会員。日本、台湾、韓国、イタリアなど個展・グループ展多数。
ポスター
写真:港千尋 / デザイン:中村陽道
交通アクセス
お問い合わせ
多摩美術大学アートとデザインの人類学研究所
〒192-0394 東京都八王子市鑓水 2-1723 メディアセンター4F
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